交差点で信号待ちをしていました。
風が吹くたびに銀杏並木から黄色の葉がこぼれ落ち、道路の上でカサカサという音を奏でてくれています。
空の青の中に黄色い世界が広がっていて、それをゆっくりと見ながら目線を移動していると・・
あら、とっても高価そうな漆黒のロングコートを着た男性が立っています。
あれ?
あれ?
あのヘアースタイル・・
あの背格好・・・
小柄で足が細くて、立ち方のクセがあって、
ああ、受診しているところの先生だわ。
そして先生の少し後ろから見える人がいて、
背中が丸まっていて、
コートの毛並みがとても光沢があり、いかにも品の良い黒いという感じの女性が一歩一歩足元を確認しながらゆっくりと進んでいます。
よく見ると・・ああ、体の片側に麻痺があるみたいで、足がご不自由なのね、とわかりました。
それにしてもこの地域の人は絶対着ないような高級な質感の・・コート。
目線をずらすと、
あ、先生がいつも乗っている真っ黒な超高級外国車だわ(これで先生と確信しました)
女性はやっと車にたどり着き、
後部座席に乗り込んで・・
それでもとっても時間がかかる動きで、
大変ですね、とずっと遠くから見ていました。
車に乗り込んで、
近所に先生が立てた20階建て新築マンション一棟(施工主が先生名で記載)あるのですが、
そちらの方へ車は走り去りました。
ふっと浮かんできた言葉が
「諸行無常」・・
って、私、なんなの?と自分で自分にツッコミをしていましてね。
なぜこんな言葉が浮かんできたのかしら?と思いましてね。
考えてみました。
するとですね・・
やっぱりどんな人でも生老病死、というところに着地していて、
物凄く稼いでいても病気や老いや・・になるのですものね、と。
年は取ることは確実で、
誰でも病気になることも確実で、
どんなに鍛えてもあちこち弱る。
お金ではどうしようもないこともある。
先生とその女性(多分お母様)の介助をしてあげようかしら?と思ったのですが、
先生の反応を考えて、あえて声を掛けるのは辞めました。
うう・・ちょっと心が痛い。
仕方ないわ、と思いながらその日は過ごし、
やっぱり介助してあげたら良かったかしら?と思っていました。
ちょっと自分の心に消化不良感が残りました。
そして今日。
地下鉄の階段を降りようとするとちょっと前にショッピングカートを持っている小柄で細身の高齢の女性がいる。
階段の手前でそのカートを持ち上げたので、
周りの人が誰か手伝うかしら?と思っていると、
誰も何もしてくれないので、
私が後ろからその女性の肩を静かに叩き、
「お荷物、持ってあげますよ」と言うと
女性は振り返り、
「ありがとうございます。助かります」と言ってもらえまして、
(たまに怒られる時もある、残念)
私が彼女のショッピングカートを持ち、
「手すりを持ってゆっくり降りてくださいね」と声を掛け、
私も手すりをしっかり使い、彼女の小さな背中を見ながら後ろからゆっくり階段をおりました。
たくさんの苦労を背負って来たのよね・・
改札を通り、
また階段なので、
「お持ちしますよ」といい、
降り終わるまで持ってあげました。
無事に到着すると女性は何度も頭を下げて
「ありがとうございます。ここの乗り場はエレベーターが無いので大変なのです。
病院の帰り道で疲れていたので助かりました」と言われました。
その言葉の温度を感じたときに、前日の「お医者さんのお母さん・・」の時に起きていたモヤモヤ感が胸から抜けていく感じがしました。
人の笑顔は自分を癒してくれますね。
ほんの数分のことですが、
今日は気持ちよく帰宅できるわ、とじんわりしていました。
これから気温がかなり下がるようですが、
お互いに助け合うことで
体が冷えても心が温まるようなことがたくさんあるといいな、と思います。