JR新大阪駅のあの長〜い通路を歩るき始めていると、後ろからこんな会話が聞こえてきた。
男性同士の声で、
「すみません。地下鉄御堂筋線はどこですか?」
「それならここをまっすぐ行ったところですよ」と。
ふと後ろを振り向くと大きめのキャリーバッグをゴロゴロと引っ張りながら歩いている年配の男性が50代ぐらいのサラリーマン男性に聞いている。
50代の男性は先を急いでいるらしく、早足で歩いて行った。
残った年配の男性は、
「ここをまっすぐか?ここをまっすぐか?」と繰り返していて、顔色が引きつっている。
少しパニックになっているみたい。
ああ…きっと困っているのね、と思い、声をかけることにした。
「御堂筋線に乗るのですか?」と聞くと、男性は私を見て、
「はい、あびこに行きたいんです」と慌て口調の早口で言うので、やっぱりパニックみたい、と確信して
「私も御堂筋線に乗るので一緒に行きましょう」と言うと、
「それは助かりました!」と笑顔になった。
よく見ると手には大きな紙を持っているので、見せてもらうと…新大阪駅の東口までの行き方がマジックで大きく書いてある。
「途中のお店の人が書いてくれました」と話すのをみて、世の中にはやっぱり親切な人がいるのね…と久しぶりに心が温かくなった。
東口はJR新大阪駅の端。
反対側に地下鉄御堂筋線があり、端までかなりの距離。
ご年配の方はもちろん、疲れている私でも途中で休みたくなる距離。
地下鉄新大阪から我孫子まで、駅がたくさんある。
パニックならもしかして途中で慌てて降りるかもしれない…
落ち着かせるためにもゆっくり歩きながら男性と話してみた。
どうやらあびこには家があるらしい。
住んでいるけれど新大阪は初めて。
わからなくて困った。
元々は愛媛県。
大阪は…大変…
うん、イントネーションが違う。
そして…愛媛県やあびこの雰囲気と新大阪のスピードは違う。
こっちは…人の波の中をスタスタ歩く早足。
お年寄りなら端を歩かないとあのキャリーバッグにぶつかる、そして引かれる…
年末の人混み…
多い…
色々話していると少し落ち着いて来た。
奥様の話もし始めたので余裕も出てきた。
そして
「あそこが改札口ですよ」と言うと、
ポケットを探り始めたので、
「切符ですか?」と聞くと、
「磁気カードが」と慌て始めたので、一旦足を止め、壁に寄り…
「ゆっくり探していいですよ。私はあとは家に帰るだけなので」といい、そばで
「あるある、絶対ある」と声をかけていると
「あった!」と笑顔。
良かった、良かった。
改札を通る姿もまだ慌てているので、ホームまで案内をして、案内板を指差し、
「ほら、あそこに平仮名であびこって書いてますから、次の電車に乗ってくださいね。まだ大分先ですけど、間違いなくあびこに付きますよ」と言うと、
「良かった…」とホッとしている。
そして
「ありがとうございました」と深々と頭を下げてくれました。
そしてホームで見送りました。
いや〜
いつかは…私もああなるのよね。
何かでパニックスイッチが入ったらきっと猛烈に慌てるわ。
それが加齢。
知ってるはずなのよ。
だってあの年齢だもの。
きっと不安で、そして人の波に飲まれたのよ。
新大阪駅で困ったらどうしよう、と。
気をつけよう。
常に適度な刺激を自分に与えよう。
公共交通手段を使う限りは。
怖いわ、
怖いわ、
自分の家がわからなくなったらどうしよう。
パニックになったら文書も読めなくなるし、理解できなくなるので。
不安って、自分をわからなくさせるから気をつけよう。
そして…
最近、夕方から目が霞むので、
「見えなくなったらどうしよう…」ではなくて、
「眼科に行っているから大丈夫」といい、ルテインを飲んでます。
不安になりかけたら
「考え方が違うわよ。そうじゃなくて…」と“切り返す自分”になりましょうね