ほんの1〜2分も一緒にいないのに、
人ってエレベーターの中では本音が出ます。
私がエレベーターの掃除をしていると
1か月前から某テナントさんで働いている男性が乗り込んできました。
ふう~と声を出しているので、
「仕事、慣れましたか?」と静かに聞くと
「実は仕事が想像以上に細かすぎて、困っているのです。どうしたらいいのか悩んでしまいまして」と言うので、
「それは大変ですね」と言うと、
「覚えても忘れてしまうのです。
慣れるまでの我慢とは思っていますが、ちょっと分量が多すぎると思っています」と言いました。
そして彼の降りる階に到着。
彼は降りて行きました。
私はそのままエレベーターを掃除。
すると少しして、扉が開いて、またあの彼が入って来ました。
今度は一階へ降りていく間に、
「この仕事に自信がないのです」とポツリと言われたので、
あ~愚痴や悩みを聞いてくれる人がいなくて、
『新人の孤独』を感じているのね、と思いましたので、
「いつでもおばさんが聞いてあげるからここで本音を言ったらいいですよ」と言うと、
「ありがとうございます。聞いてもらえる人ができて、少し気楽になりました」と言って、一階で降りました。
実はここしばらくコロナの関係で採用を控えていたテナントさん。
毎年入社される方がいるならまだしも、間が空くと世代も時代も違いますしね。
彼の弱音なんて
「とにかく頑張れ」と言われて終わり。
とりあえず、彼と一緒にエレベーターに乗るタイミングを計ったり、廊下で会ったらちょこっとでも話を聞いてあげようと思いました。
ある中堅の会社に働いている友人が話していたのですが、
「私の会社には張り紙がしていて、そこには、
新人を孤独にしてはいけない。辞めてしまうから
と書いてあるのよ」と言いました。
痛い、
痛い、
そのお話、胸のあたりが痛い・・
他にも友人たちが教えてくれる“会社の壁に貼ってある文章”があるのでいずれお話したいと思います。
午前の仕事を無事に終わり、
午後2時を過ぎ、
エレベーターに乗ろうとすると後からのいつも来られる40代ぐらいの宅配の男性が大量の荷物を載せた台車を押して来たので、エレベーターを開け、
「どうぞ〜」と迎え入れました。
一緒に乗ってすぐにお兄さんは、
「ありがとうございます」と言って一礼をしたあと、
「はぁ〜」と大きなため息をついたので、
「お疲れ様です。いつも走り回っているのを見ていて、大変なお仕事ですよね」と言うと、
「いや…」と言うので、聞くと、
「暑いのか、寒いのかどっちかにしてほしいです。体が…しんどい」とうなだれていました。
外ですものね。
まして今、三寒四温。
寒いわ、
暑いわ…
なんなんだか。
着るのか脱ぐのか…
そしてまた台車を押して降りて行きました。
チラッと見えた結婚指輪…
奥さん、帰宅したら、心に響く言葉の一つでもかけて、
ご主人をねぎらってあげてくださいね。
奥さんの言葉が一番元気になるのですから。
真面目ですよ、彼。
清掃おばちゃんが見ていてもわかりますから。
仕事を終え、
マンションに到着。
エレベーターに乗ろうとすると、後から私と同じぐらいの女性が買い物袋とトイレットペーパーを持って来たのでエレベーターのドアを開け、待っていると乗って来られました。
女性は
「はぁ…」と大きなため息。
「大変ですよね。仕事して、買い物して、荷物持って歩いて…クタクタですものね」と話すと、
「しんどいだけですわ」とぐったりしているので、
「なんでこんなに疲れるまで働かなきゃならないのか、そして買い物してまた疲れて…毎日世ホントにしんどいですわ」と言うと、奥さんは頭を上げて、
「ホントそのとおりよね」と言い、私より先にエレベーターを降りて、
「お先に」と言われ、
私は、
「お疲れ様でした〜!」と大きめの声で言いました。
世の中、みんなクタクタなんですよ。
疲れ果てて、
そしてまた家のことをして…
また疲れて…
やっとご飯を食べて、
お風呂に入って、
気がついたらもう寝る時間なんですよ。
悲しいかな、
私達の年代から見ていると世の中は楽な方向へは変化していない。
「なぜそんなことを始める?」というような意味不明な何故かわからないことが始まりったり、
優先順位が違うと思うけど…ということが広まったり…
常にスピードと変化と吸収とそれを現実化できるかどうかであり、できる人とできない人に振り分けられ、
できなければ不平等を感じ、
理解できるまで時間がかかれば(一部の人達から)迷惑そうに対応される。
「疲れる」。
常に新しいことを少し遅れてから覚えるようにしている私でも疲れる。
「疲れた」を会社でははっきり言えないのでエレベーターの軽い個室感が
密室会話の空気になり、心を縛っている紐を緩めるのかもしれませんね。